『バンザイ椿』というタイトルで友人がエッセイを書きました。よろしければご覧ください。
※友人に利用の許諾を得ています。
友人のエッセイ『バンザイ椿』
広い庭の中の椿
広い庭の中に大きな椿(ツバキ)の木がありました。
今年の冬も、美しいピンク色の花が咲き始めました。
2月の雪深い時だというのに、『もうすぐ春だよ~』と、何かが知らせに来たのでしょうか?
雪景色の中にピンク色の花がはえています。
そこへ、貧しい家の女の子が1人やってきました。
「これ、つんでもいい?」
「これ、もらってもいい?」
お花の好きな貧しい女の子が、椿の庭のお家の人にきいています。
椿の庭がある大きなお家に住んでいたのは、優しい奥さんでした。
奥さんには少し惜しい気持ちがありましたが、子どもが椿の花を欲しがる理由を知っていました。
椿の花はたくさん咲いているし、子どもが好きだから。「いいよ。いいよ。」と奥さんはニッコリと答えました。
子どもは表情がパッと明るくなり、喜んで椿の花をたくさんもらっていきました。
「あ~きれい!このピンク色大好き!!」
子どもは病気の母親に大好きなピンク色の椿の花を見せようと思ったのです。
椿と母親と子ども
子どもが持ってきたピンク色の椿の花を見て、母親は言いました。
「何てキレイなのだろう。このピンク色のキレイなこと・・・。」
母親はしばらく、うっとりと眺めてから、
「でも、こんなにもらってきて、よかったのかい?」
「たくさんつんだら、木がダメにならないかい?」
と、子どもに問いかけました。
「おばちゃんが、大きな木だから大丈夫だって言っていたよ。」と、子どもは答えました。
もらった椿は、花瓶に飾ることにしました。ハサミでチョキチョキ切って、格好よく飾れたので、しばらく2人で見とれておりました。
椿の中には花瓶に入りきらない、小さな蕾(つぼみ)のモノもありました。もったいないけれど、捨てるしかありません。
お手上げ椿
『プンプンプン!!エーン、エーン』
『プンプンプン!!エーン、エーン』
あれ?誰かが怒っているみたい?
あれ?やっぱり泣いているみたい?
花瓶に入りきらなかった「蕾の椿ちゃん」です。
捨てるのがもったいないと、トウフの空き容器に水を入れて1本、飾っておいたのでした。
すっかり忘れられて、干からびてきました。
『私だけ、花瓶に入りきらなくて、こんな所に1本だけ入れられて・・・。兄弟たちは、花瓶の中でワイワイ楽しそうなのに。「わ~、きれいね~。」なんて、言われているのに。私だけ——。』
『プンプンプン!!エーン、エーン』
『プンプンプン!!エーン、エーン』
『私、もう、このまま枯れてしまうんだわ・・・。私、もう、お手上げ!!』
「お手上げ椿」は悲しそう。
何だか本当に、手を上げているように見えます。
「お手上げ椿」の嘆きの声が子どもの心に届いたのか、ある日ふと台所の隅を見た子どもが、干からびてきた椿の蕾に気が付きました。
「あれ・・・、この椿、葉が乾いて元気がなさそう。こんな所に置きっぱなしにしてて、忘れてた。水も少なくなってる・・・ゴメンね。」
子どもは「蕾の椿ちゃん」を指で優しく持って、顔をぐ~んと近づけて、様子を見ました。
子どもは、もう枯れてしまいそうな状態になっている椿に気付き、いっそ捨ててしまおうかとも思いました。
だけど——、ダメでも、やってみよう!!
バンザイ椿
子どもは、「蕾の椿ちゃん」が入っているトウフ容器の水を新しいのに替えて、たっぷり入れてあげました。以前、お母さんがやっていたみたいに、水の中で茎をハサミで切り直してあげました。そして、明るい窓際に置いてあげました。「植物は明るいのが好きなはず・・・。」
数日たって、「蕾の椿ちゃん」の先端がピンク色に色づいてきました。
「やったー!」
子どもは、「蕾の椿ちゃん」を観察するのが楽しみになりました。
さらに数日たつと、蕾は大きくなり、上半分程がピンク色に染まりました。
「かわいいな~。キレイだな~。」
今では、「蕾の椿ちゃん」は、トウフ容器の中でニコニコしています。子どもに褒めてもらって満足そうです。
「お手上げ椿」は「バンザイ椿」になりました。
コメント